
■「大学費用、株に投資しておいてもらった方が良かったわ」
大学を卒業したものの、いまだに家で進路を模索している息子が、
ぽつりと言った。
笑えない。
でも、笑うしかない。
正直その言葉に隠された、息子の「本音」に気づいたとき、
私は胸がツンと痛くなった。
■奨学金という「マイナススタート」の切符すら、私にはなかった
今朝の新聞に、奨学金の記事が載っていた。
日本学生支援機構の第二種奨学金。
その返還利率は2016年からじわじわと上がり続け、
2026年3月時点の固定方式は年2.423%に達したという。
社会に一歩を踏み出した瞬間に、それだけの利息がつく借金を背負う。
まさにマイナスからのスタートだ。
しかし、かつての私には、その切符すら守られなかった。
「高校に行かせてもらっただけで感謝しろ」
それが実家のスタンスだった。
大学進学という選択肢は、最初から存在しない。
自分より成績の悪かった同級生たちが、大卒の肩書きで大手メーカーへ就職していくのを、私はただ見つめていた。
大卒と高卒の壁が、今よりも遥かに分厚く、高かった時代だ。
悔しかった。ずっと、心の底から悔しかった。
だからこそ、「自分の子供には絶対に大学へ行かせる」と、
それだけは心に固く誓っていた。
■1994年、学資保険を組んだ。あの頃、投資という選択肢はなかった
子供たちの誕生に合わせて、すぐに学資保険を組んだ。
娘が生まれたのは1994年、息子は1997年。
バブルが弾けた直後のどんよりとした空気の中、
私の頭に「株式投資」という選択肢は爪の先ほどもなかった。
今なら「あの頃から投資していれば」なんて言う人もいるかもしれない。
でも、30年前の日本には、
今のような手数料が安くて良質な「全世界株式インデックス(オルカン)」
なんて存在しなかったのだ。
買うだけで高い手数料を取られ、ネット証券もNISAもない時代。
あの過酷な投資環境の中で、大切な教育資金を株に突っ込まなかったのは、
親として当然の防衛策だった。
当時の私にとっては、学資保険を選ぶことしか、
我が子を守る選択肢はなかったのだ。
■2人で2000万円超。それでも「ノーローン」で送り出した
結果として、私は子供たちを2人とも、奨学金なし(ノーローン)で大学へ出した。
美大系のデザイン学科に進んだ娘は、課題に追われ、材料費が湯水のように消えていく。
私はお小遣いも材料費も、惜しみなく差し出した。
私立大学へ進み、一人暮らしを始めた息子には、毎月10万円を仕送りした。
「足りない」と連絡が来るたびに、なんとか工面して口座に振り込んだ。
2人合わせて、4年間で2000万円。実際はそれを優に超えていただろう。
■娘からも、息子からも、私はもう「配当」をもらっている
子育てを投資に例えるなら。
フリーランスのデザイナーとして自分の足で立っている娘からは、
生き生きと働く姿という、お金には換算できない極上の配当をもらっている。
じゃあ、家にいる息子からは、まだ配当が出ていないのだろうか?
……いや、そんなことはない。
息子は、私なんて逆立ちしたって入れないような、
誰もが知る名の通った大学に、ストレートで合格してくれたのだ。
あの合格発表の日の、弾けるような喜び。
親としての誇らしさ。
正直に言えば、「この子は将来、世界を飛び回るような仕事をするんじゃないか」
なんて期待を抱いた時期もあったけれど、あの時もらった感動だけで、
親としてはもう、十分すぎるほどの配当をもらっていたのだ。
■息子の言葉の裏にある、不器用な申し訳なさ
だからこそ、息子のあの言葉が、静かに胸に響く。
「株に入れといてもらったら良かったわ」
それは、親が必死に用意してくれたお金を、
今の自分は無駄にしてしまっているのではないかという、
息子なりの「申し訳なさ」だったのだと思う。
自分がうまく立ち上がれないせいで、親に損をさせてしまっている、
という自責の念。
そんなことないよ、と私は思う。
大学に使ったお金が役に立っていないなんて、
これっぽっちも思っていない。
投資の世界には「塩漬け」なんて言葉があるけれど、息子はそんなものじゃない。
ただ、次のステップに向けて、人生のエネルギーをじっと蓄えている最中なのだ。
親からもらった有形無形の資産を、
彼自身の中でどう開花させるか、迷いながら考えているのだろう。
私はこの「銘柄」を、誰が何と言おうと、ずっと信じて見守っていくと決めている。
■今の私が思うこと。もし孫が生まれたら、オルカンを。
アラカン世代の読者の中には、すでに子育てを終え、
お孫さんがいる方も多いかもしれない。
30年前の私には学資保険しか選べなかったけれど、
今は誰もが良質な投資信託を、スマートフォン一つで買える環境が整っている。
子供や孫のためのNISA制度だって、私たちの時代とは比べものにならないくらい拡充された。
もし、今の私が出産祝いを贈るなら、
「オルカン」をプレゼントするのも悪くない選択肢だな、と思う。
お金の面はオルカンに任せて、親や祖父母は、子供たちの成長の一瞬一瞬を、ただ純粋に信じて喜ぶ。
それこそが、この時代だからこそできる最高の贅沢かもしれない。
※本記事は個人の投資経験に基づくものであり、特定の銘柄・投資手法を推奨するものではありません。
投資判断はご自身の責任でお願いします。

良いものに出会ったとき、そっと感謝を形にできる人が好きよ。画面の向こうへの小さな会釈——お帰りの前に、忘れていないかしら?
押せばアラ還主婦たちのつぶやきに会えるわよ。