小金持泰子〜汗も涙も流さず静かに資産を増やす〜

必死に働いて節約もしてきた。それでも老後の不安は消えなかった。だから私は投資という選択肢を取った。投資(勿論、NISAも活用)と少しの現金で、静かに資産を積み上げている。汗も涙も流さない主義。だって、お化粧が崩れてしまうわ。

700万円で売れた土地の本当の値段

土地が売れた。
夫の親から受け継いだ、三十坪ほどの土地。
売却額は700万円超。

「まあまあ良かったね」と思うなかれ。
実際に手元に残った金額を計算したとき、私は言葉を失った。

◼️損失を、全部並べてみる

感情の話は後にする。まず数字を見てほしい。


※解体費用 約200万円

義父母が亡くなって一年後、建物を解体した。
理由は「古家を放置すると治安が悪くなるから」という、もっともらしいもの。
この時はまだ、売るつもりなど毛頭なかった。(夫が)

夫は「先祖の土地は売ってはいけない」と言い続けていた。
親が買っただけで、先祖代々でもなんでもない土地なのに、
なぜあそこまで頑なだったのか。

更地にすれば固定資産税が跳ね上がることも知らずに、
200万円かけて綺麗さっぱり解体した。

※固定資産税 約85万円(65,000円×13年)
更地にした途端、固定資産税の請求書を見て冷や汗。
住宅用地の特例が外れるからだ。
そこから13年、毎年65,000円を虚空に放り込むように払い続けた。
今住んでいるマンションの固定資産税だけで年間10万円かかるというのに、
誰も使わない、見にも行かない土地の分まで二重にむしり取られる。

夫は時々、草むしりのためだけにわざわざ車を運転して行っていた。
ガソリン代と労力をかけて、一体何を守っていたのだろう。

※譲渡税+仲介手数料 約130万円
65歳になり、嘱託勤務が終わり、いよいよアルバイト生活が始まる。
収入が激減するのに固定資産税を二重に払い続けるのはさすがにきつい。
重い空気が漂う我が家に、義弟からの一言が突き刺さった。

「お父さんが買っただけやから、別に先祖代々でもないし。
農家の田畑とは違うんやから、売ったら?」

夫がやっと動いた。
妻である私が何年、何十回言っても動かなかったのに、
身内の男の一言でこれだ。

そして、ようやく売却へ。

しかし、ここでも「無知」が牙をむく。親が土地を買ったのは60年以上前。
購入時の資料など残っているはずもない。
取得費が不明の場合、売却額のわずか5%しか経費として認められないのだ。
700万円の5%は、たったの35万円。
残りの665万円近くがすべて「儲け(課税対象)」とみなされる。
長期譲渡所得の税金と仲介手数料を合わせ、約130万円が瞬く間に消えていった。

◼️さらに——3,000万円特別控除、未使用

相続した空き家(またはその跡地)を売却する際に使える、国が用意した特例がある。
条件を満たして「相続から3年以内」に売れば、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度だ。
もしこれを知ってすぐに動いていれば、税金はほぼゼロだった。

知らなかった。
誰も教えてくれなかった。
いや、正確には——自分で調べようとしなかったのだ。


◼️損失の合計:約415万円

700万円で売れた土地の、実質手取りは285万円前後。

◼️さらに追い打ち——翌年の住民税という伏兵

土地を売ったのは夫が65歳のとき。
嘱託勤務の最終年、最後のまとまった給与所得と、
土地の売却益が同じ年に重なってしまった。

ご存じの通り、住民税は「前年の所得」に対して容赦なく課税される。

翌年、66歳。
意気揚々とアルバイト生活を始めた夫の元に、
恐怖の通知書が届いた。

◼️月8万円超。年間で約100万円

せっかくのアルバイト代が、1円も残らず丸ごと消えた。

夫は激怒した。「俺だけ狙い撃ちで税金を取られている!おかしい!」と。

怒る気持ちはわかる。でも、怒る相手が違う。
国でも税務署でもない、無知だった私たち自身だ。
そして今も、彼は月9万円以上バイトで稼いだ、と嬉しそうに報告してくる。
翌年の住民税がまた上がることになるから、
控除の範囲を意識してほしいと何度も伝えているのに、全く耳を貸さない。
接着剤で耳でも塞いでいるのだろうか。
そしてまた通知書を見て怒る。
このループの繰り返しだ。馬鹿馬鹿しくて、もう涙も出ない。

◼️無知は罪か

50代、60代になり、それなりに社会的な経験も積み、
地位も築いてきた人間が、こんな基本的なことすら知らないなんて。。。
思い返すと、情けなくて恥ずかしくてたまらなくなる。

世間の人はみんな、こういうことを当たり前のように知っているのだろうか。
私たち夫婦がただ無知すぎるだけだったのだろうか。

罪、とまでは言わない。

でも、無知には、確実に「コスト」がかかる。
そのコストは、知識のあるスマートな人間には絶対に請求されない。
知らない人間だけが、背後から刺されるように、静かに、淡々と払わされるのだ。
更地にすれば固定資産税が上がること。
相続後、3年以内に売れば控除が使えたこと。
売却益と給与が重なれば翌年の住民税が跳ね上がること。
アルバイト収入が増えれば翌年また住民税が上がること。

どれも、知っていれば、ほんの少し調べる労力を惜しまなければ、
すべて避けられる話だ。

当時の私は家事や仕事、子供たちのことで手いっぱいだったし、
夫の実家の土地に口を出せる立場でもなかった。お金の勉強もしていなかった。
そしてひたすら銀行の積立貯金だけしていれば安心と信じていた。

「無知は罪」どころか、ルールを決めている側からすれば、
黙って余分に納めてくれる私たちは、むしろ「大歓迎のお得意様」だったに違いない。
今は、猛烈に思う。
知らないことは、誰かが肩代わりしてくれない。
この世の中、無知な人間は格好のターゲットになる。
悪質な詐欺も、合法的な税金も、仕組みは同じだ。
悪意があるかないかの違いだけで、
知らない人間から順番に、身ぐるみ剥がされていく。

◼️今の私がしていること

あの頃の、歯ぎしりしたくなるような悔しさが、
今の私を動かしている。

夫に頼るのをやめ、自分で高配当株を調べ、ETFをコツコツと積み立て、
税制の仕組みを少しずつパズルのように理解していった。
完璧ではない。
でも「知らないままでいること」の恐怖を知ったからこそ、
もう二度とカモにはされないと決めている。

転んでもタダでは起きない。

415万円の授業料はあまりにも高すぎたけれど、
これから先の投資と知識で、少なくともその分は、
きっちり取り返しにいくつもりだ。

◼️まとめ:我が家の「無知のコスト」一覧


解体費用/約200万円
固定資産税13年分/約85万円
譲渡税+仲介手数料/約130万円

合計損失/約415万円

売却額700万円の実質手取り/約285万円


我が家の高い「授業料」の失敗談が、誰かの参考になれば幸いだ。


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