
◼️「投資は危ない」と言う夫が、持ち株会だけは信じる矛盾
夫は昭和の価値観をそのまま引きずって生きている人間だ。
「投資は危ない」が口癖で、唯一の例外は勤め先の持ち株会だけ。
……いや、ちょっと待ってほしい。
勤め先の株を給料天引きで買い続けるなんて、会社が傾いたら職も資産も同時に失うリスクの塊ではないか。
投資の教科書なら真っ先に「やってはいけない」と赤ペンを入れられる案件だ。
だが、夫にとってはそれが「安全」で、私が外の優良企業の株を買うのは「危険」なのだという。
昭和の頑固な脳内変換というのは、実にかくも不可解である。
そんな夫を説得しようなんて、最初から思わなかった。
理屈が通じないなら、胃袋と五感に直接訴えかけるまでだ。
■ まず、胃袋から攻めた
最初に効いたのはオリックスの株主優待だった。
カタログから選んだ地方の美味い肉が届く。
それを最高の焼き加減で食卓に並べ、ビールを注ぎながら、さらっと言ってのけた。
「これ、株主優待でもらったやつ。配当だけじゃなくて、こういうのもあるんよ」
夫は黙って箸を動かした。
ひと言も危険だとは言わなかった。
その後、オリックスは優待を廃止してしまったけれど、代わりにしっかり増配してくれた。
こっちはこっちで、私の口座が潤うから悪くない。
■ 次に、財布を攻めた
稲畑産業の株主優待でもらったQUOカード。
これがいい仕事をしてくれた。
夫とコンビニに寄ったとき、夫が晩酌用の缶ビールを手にしたタイミングを見計らって、
財布からさっとカードを出した。
「これで払えばいいよ」
レジの前で、夫の顔がほんの少し緩む。
「稲畑産業か、懐かしいな。昔うちの会社ともちょっと取引があったわ」
と、急に馴染みの会社の思い出話を語り出すのだから現金なものだ。
知ってる会社の株が、自分の晩酌を無料にしてくれる。
これは刺さった。
■ とどめは、極上の旅行体験だ
極めつけは、近畿日本鉄道の株主優待乗車券である。
万博の時はこれを利用して、
「乗車券がタダだから行こう」と夫を誘い出した。
もちろん、特急「ひのとり」のプレミアム車両を奢る。
味を占めた今年は、お伊勢参りだ。
乗車券が浮いたのだから、特急は当然デラックスシート一択。
ゆったりとシートに身を沈め、新緑を眺めながら伊勢の神宮へ向かう道中、
夫はずっと上機嫌だった。
■ 昭和夫が、ついに黙った理由
タダが好き、お得が好き。そこを刺激し続けたのは確かだ。
だが、夫が最近変わってきた理由は、それだけではないと思っている。
最近はテレビのニュースでも、重苦しいトーン
「現金だけでは老後は厳しい」「インフレ対策を」
という言葉が流れるようになった。
さすがに世の中の空気が「現金一択は危ない」
というムードに傾いてきたのを、あの保守的な夫も肌で感じているのだろう。
そこに、私が何年もかけてコツコツ積み上げてきた配当生活と、
優待という名の「目に見える果実」が容赦なく差し出されるわけだ。
時代の追い風と、私の地道な懐柔作戦が、ここにきて見事に重なった。
最近の夫は、私の投資に対して文句を言うどころか、ほんの少し理解を示すようになりつつある。
人間、変われば変わるものだ。
私は一度も「投資をしなさい」なんて説得はしていない。
ただ、美味いものを食べさせて、タダでビールを飲ませて、贅沢な気分で旅をさせた。
それだけだ。
昭和の男を転がすなんて、実は案外、簡単なことなのかもしれない。
※本記事は筆者個人の投資経験・考え方をもとに書いたものです。特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

世の中に本当の意味で『無料』なものなんて存在しないわ。良質なものをいただいたら、それに見合った感謝を形にする。それが大人の礼儀というものでしょう。私の毒、受け取っていただけたかしら?
押せばアラ還主婦たちのつぶやきに会えるわよ