
◼️だれが頼んだその点々
私はたしかに「キスだらけの人生」と
打ったはずなのだ。
指先にまで色香を込めて、甘く、うっとりするような一文を。
なのになぜか、変換キーを叩いた瞬間に現れたのは「キズだらけの人生」という、
あまりに救いのない文字列だった。
誰も頼んでないのに。
これ、人生の縮図じゃないかと思う。
甘い予定が、気づいたら傷になってる。
◼️キズだらけの毎日
結婚だって、子育てだって、そしてあの母との果てしないバトルだって。
最初はみんな、濁点のない、清らかな「キス」のような期待から始まっていたはずなのに。
それがいつの間にか、誰に頼まれるまでもなく点々が降り注ぎ、
気づけば生傷の絶えない「キズ」だらけの毎日になっている。
◼️最初の点々
一番古い「点々」の記憶は、五歳頃だと思う。
祖父母の家の居間で、私は泣いていた。
なぜ泣いていたのか、誰に何を言われたのか、
もう覚えていない。
ただ、気がついたら母と兄だけがいなくなっていて、私だけが残されていた。
不安と怖さと悲しさが、ぐちゃぐちゃに混ざったまま、今も胸の底に沈んでいる。
あれが最初の「キズ」だったのかもしれない。
◼️蜜だらけの人生
よく言うでしょう、他人の不幸は蜜の味って。
意地悪な言葉に聞こえるけど、正直だと思う。だってほっとする
「自分よりひどい人がいた」って思うと。
それで今日も生きていける、みたいな。
だとしたら私の人生、読んでくれてる方にとってかなり上質な蜜じゃないかと思う。
母の話、自分の話。女二代にわたる業と情と、あれこれ。
そこそこリアルで、そこそこ悲惨。
どうぞ遠慮なく蜜として召し上がれって感じ。
人生の端っこに転がっている、この「変換ミス」みたいなくだらなさこそが、
一番の贅沢。これからもこの「キズ」を、極上の蜜に変えてお届けしようと思う。